イノシシが口に人差し指を当てて、静かにするように「しー」と促しているイラスト

インナーゲーム

 少年が味噌汁を運ぼうとしたら、母親が声をかけた。

「こぼさないように気をつけて」

「うん」と返事をした直後、少年は見事につまずき、味噌汁を床にぶんまけてしまった。いつもはこぼさずに運んでいた。母親が「気をつけて」と念を押したその日に限って、見事にこぼしたのだった。

 あの時、なんでつまずいたんだろう。いつもより気をつけていたのに。そんな古い記憶を辿っていたら、ふと本棚の『インナーゲーム』と目があった。答えはすぐに見つかった。

『新インナーゲーム』(W.T.ガルウェイ 著、後藤新弥 訳、日刊スポーツ出版社、2000年)

『カラダは指示をされると、上手く動けなくなる』

 なるほど。「足をそっと出して」、「腕を揺らさないように」。あの時、ボクの頭はうるさかった。でも頭はすぐに口を出す。「もっとこうしろ」「違う、ああしろ」。うるさいなぁ。この頭、どうやったら黙るんだろう。

 それで結局、モジャモジャ先生を訪ねた。

「まあ、お茶でもどうぞ」

 先生はそう言って、熱々のほうじ茶を出してくれた。

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