勉強会の後は、いつもの居酒屋で延長戦となる。モジャモジャ先生は、お酒が入るといつも口滑らかだった。
「野球の千本ノックのような、限界を超える練習。あの中には、スポーツの奥義が潜んでいるんです。それは、『フラフラになってからが上達の本番』ということなんです」
「元気なうちは、力任せに動けてしまう。でも力むことができなくなると、身体は無駄のない動きを覚え始めます。フラフラになってから、上達がグンと加速するんですよ」
「キツく苦しい時間は、力を抜くための準備期間なんです。身体を動かすのが下手な自分を脱ぎ捨てる時間。だから、始めからフラフラをまとってしまえば、グングン上達するゾーンにタイムスリップできるんですよ」
そんな話だった。その日の帰り際、席を立った先生が、フラフラとよろけそうになった。「先生、大丈夫ですか」と声をかけると、先生は「ええ、絶好調です」と笑顔で答えた。その場は、ドッと笑いに包まれた。
